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紀北分院でフレイル対策を
紀北分院とともにフレイル対策を
- 全科をあげて総合的な対策を提供します
- 成人病対策 → 糖尿病、高血圧
- 整形外科 → 脊柱、膝、腰
- 眼科 → 白内障
- リハビリテーション科 → 運動指導
- 認知症疾患医療センター → 認知症
- フレイル健診 → 全科
紀北分院では地域高齢者の活力維持向上のため、フレイル対策を積極的に行っています。社会の高齢化がすすむなか、フレイルは高齢者の活動性を奪う最大の原因といっても過言ではありません。地域の方々に是非フレイルについて知っていただき、健康や生活維持のキーワードとして取り組んでいただければと思います。幸い紀北分院には整形外科や認知症の専門家、眼科医医師がおり、フレイル対策へのスタッフが常駐しています。紀北分院は地域のための病院としてフレイルの診断や対策のお手伝いをさせていただきます。
フレイルって何?
?化に伴う弱さ?脆弱性がフレイル
フレイルは英語の frailty の訳語で、脆弱性、脆さといった意味があります。1990年代から身体的に余裕がなくなり障害に陥りやすい状態をフレイルと定義し、研究や対策が活発になってきました。わが国でも2014年に日本老年医学会が「フレイル」に関するステートメントを発表し、社会的な関心が高まっています。フレイルをわかりやすく言うと、年をとってくると、身体的、精神的な余裕がなくなってきて、些細な変化やストレスによって障害を受けやすい状態のことを言います。いわば介護を受ける予備軍ということができます。年をとっても元気な生活を続けることや長寿にフレイル対策が役?つと考えられます。
フレイルがもたらすもの
- 転倒?骨折
- 要介護状態
- 施設入所
- 認知症
フレイルが存在すると、生活上のストレスに弱くなります。よく言われる精神的なストレスだけでなく、感染症や外傷、手術などもストレスに含まれ、これらに直面した際に転倒?骨折を生じたり、そのまま生活機能が衰えて寝たきりになったり、認知症になってしまい、要介護状態や施設入所に直結することもあります。老化は誰にでもおとずれるもので避けることができませんが、老化は自覚するもの、しないものを含めて徐々に進行し個人差が大きいものです。早めにフレイルを自覚し、適切な対策をとることが非常に大切になります。
フレイルには3つあって悪いサイクルを作っている
- 身体的フレイル
- 精神心理的フレイル
- 社会的フレイル
フレイルは身体的なものだけではなく(身体的フレイル)、精神心理的なもの(精神心理的フレイル)、社会的なもの(社会的フレイル)の3つの側面があります。腰や膝が痛くて動きが悪くなったり、筋肉も衰えることは身体的フレイルになります。もの忘れや生活の段取りが悪くなることは精神心理的フレイルです。老化にともなう憂鬱感や疎外感などもこれに含まれます。人との付き合いが減り、外出もしないで閉じこもってしまうことは社会的フレイルということになります。重要なのは、これらが一つ一つ独?して存在するのではなく、3つのフレイルが互いに悪影響を及ぼしながら、悪いサイクルを作ってしまうことです。
フレイルの原因
フレイルの原因はたくさんある
フレイルの原因は非常にたくさんあります。糖尿病や高血圧?脂質異常症などの生活習慣病、脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血など)、心筋梗塞、がん、ポリファーマシー(薬の飲み過ぎ)、感覚器障害(白内障、黄斑変性症、聴力低下)、歯の問題、嚥下機能、認知機能低下、うつ、一人暮らし、社会からの孤立、低栄養などが単独に、あるいは多くの場合は複数が影響し合いながらフレイルの原因となります。疾患や家族構成など致し方ないものもありますが、ポリファーマシーや栄養などは介入が可能ですし、白内障に手術を行ったり、聴?障害に補聴器を使?することも重要です。介入可能な要因を放置せず、丁寧に対応していくことで、フレイルの進行を回避することができます。
フレイルのチェック、診断
- 基本チェックリスト(KCL)
- 簡易フレイル?インデックス
- Friedらの診断基準
- J-CHS基準
フレイルの診断やチェックには多くの方法がありますが、わが国では基本チェックリスト(KCL)がよく?いられます。KCLは25項目からなり、8点を超えると自立性の喪失や死亡が多くなることが示されています(Geriatr Gerontol Int 15,518,2015)。さらに簡易なものとして簡易フレイル?インデックスがあり、5つの質問のうち3つ以上があてはまる場合、要介護や死亡のリスクが高くなるとされています。
フレイルの診断基準としてはFriedらによるものが有名です(J Gerontol A Biol Sci Med Sci 56,M146-156,2001)。5つの項目のうち3つ以上該当するとフレイルと診断され、1~2つの場合をプレフレイルと呼び、一つもなければ健常と考えられます。Friedらの研究によると、フレイルと診断された場合はその後の死亡率が高くなり、5年生存率は約7割という研究もあります。また4年間で4割が要介護に移行すると報告されています。わが国ではJ-CHS基準がよく?いられます。
介護予防のための生活機能評価に関するマニュアル(改訂版)厚生労働省より引用
簡易フレイルインデックス | |
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6ヶ月間で2~3㎏の体重減少がありましたか | はいで1点 |
以前に比べて歩く速度が遅くなってきたと思いますか | はいで1点 |
ウォーキング等の運動を週に1回以上していますか | いいえで1点 |
5分前のことを思い出せますか | いいえで1点 |
(ここ2週間)わけもなく疲れたような感じがする | はいで1点 |
(J Am Med Diir Assoc 16, 1002 e7-11, 2015)
Friedらのフレイル診断基準 |
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体重減少 |
疲労感を感じる |
日常生活活動量減少 |
身体能力(歩行速度)が低下 |
筋力(握力)が低下 |
J-CHS基準 | |
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体重減少 | 6ヶ月で2~3㎏以上の体重減少 |
筋力低下 | 握力:男性<26㎏、女性<18㎏ |
疲労感 | ここ2週間わけもなく疲れた感じがする |
歩行速度 | 通常歩行速度<1.0m/秒 |
身体活動 |
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(長寿医療研究開発費事業25-11「フレイルの進行に関わる要因に関する研究」班)
サルコペニアとの関連
サルコペニアはフレイルの一部
サルコペニアは筋力?筋量の低下を示すことばで、高齢者の方で、握力と歩行速度のいずれか、もしくは両方が低下しており、また身体の筋量を測定して低下が確認されればサルコペニアと診断されます。サルコペニアも老化や栄養状態、運動状況や他の疾患の影響などによって生じると考えられています。
サルコペニア対策はフレイル対策
サルコペニアは脊椎疾患、腰痛、膝関節疾患など、整形外科に関連した病気でおこりやすい他、特に糖尿病の影響は非常に大きいとする研究結果が出されているところです。また腎臓病との関連も指摘されており、慢性腎臓病(CKD)をお持ちの方はサルコペニアを発症しやすいと考えられます。また認知機能の低下に伴ううつ気分、やる気のなさにも関連します。運動は認知機能の改善にも効果がありますし、筋力?筋量の維持やフレイル対策としても重要であり、これらの問題に総合的に対処していくことで全体的な健康改善に役立ちます。
視?とフレイルの関連
目が悪いとフレイルが悪化し、認知機能も低下する
視力はフレイルに関係するという報告がたくさんあります。白内障とフレイルの関係や(Ophthalmology, 113, 2209-2212, 2006)、またフレイルに関連する身体徴候としては痛みの次ぎに視力低下が重要であるという報告もされています(Arch Gerentol Geriat50 Supple 1, S43-S47, 2010)。さらに、69歳以上の女性において、視力障害群では、認知機能低下が1.78倍、聴力障害も加わると2.19倍になるという報告もあります(J Am Geriatr Soc 52, 1996-2002, 2004)。また、聴力が悪いと骨折が増えたり、うつや認知症を発症しやすくなるという報告もあり、視力と同様注意が必要です。
紀北分院でフレイルチェック、フレイル対策を
- フレイルチェック(基本チェックリスト、J-CHS)
- 身体測定(血圧、肥満度、握力など)
- 血液検査(糖尿病、脂質異常症など)
- 認知機能チェック(長谷川式、MMSE、DASC-21、FAB、PSMS、IADL)
- サルコペニアチェック
- 骨粗鬆症診断
- 視力検査、聴力検査
- 画像検査(頭部MRI、二重X線吸収法:DXA法)
紀北分院ではフレイルが心配な地域住民の方々のために、フレイルのチェックを施行させていただきます。自分でフレイルチェックを行って、フレイルが心配な方は担当医に相談してみてください。心配な点を中心に各科で対応させていただきます。