全身疾患と腎臓病(糖尿病性腎臓病など)
腎臓は様々な病気の影響を受けて障害が起こる臓器です。腎臓のみが悪くなる疾患も当然ありますが、全身を冒す疾患の一症状として腎障害が生じることが非常に多く、代表的なものとして、透析導入の原疾患の第一位である糖尿病、第二位である腎硬化症があります。また、リウマチ?膠原病、悪性腫瘍、心臓と織りなす悪循環などがあり、腎臓だけでなく全身を診る必要があります。
まず糖尿病に関連した腎障害ですが、従来の呼称である糖尿病性腎症に加え、糖尿病性腎臓病という、より広義の名称が広まってきています。典型的な糖尿病による腎障害である糖尿病性腎症は、微量な尿蛋白が出現し、それが増加した後に腎機能障害が進行、その進行速度は非常に早く、腎機能障害出現から数年で透析導入に至るという、非常に怖いものになります。腎機能障害が出始めてからだと治療に難渋する場合が多いため、尿蛋白が出ないように、あるいは出始めたとしても治療を強化して減らせるように、診療していきます。糖尿病性腎臓病は、糖尿病性腎症だけでなく、尿蛋白を認めない進行性腎障害で糖尿病の関与が疑われる場合も含みます。比較的新しい疾患概念であり、治療のエビデンスについては構築途中になります。
腎硬化症は、腎臓の血管の動脈硬化が原因となり腎障害が進行する疾患で、高血圧が大きく関与しています。尿検査異常はほとんどないか、軽度の尿蛋白に止まりますが、腎機能障害が徐々に進行します。高齢化に伴い透析導入の原因として増加傾向にあり、近年透析医学会の統計調査において、慢性糸球体腎炎を抜き原因の第二位となりました。早期からの血圧管理が重要になります。
リウマチ?膠原病から腎障害を来す疾患の中には、特に注意が必要なものがあります。急速進行性糸球体腎炎という、腎機能障害が急速に進行する腎炎を起こすものがあり、代表的な疾患として顕微鏡的多発血管炎、多発血管炎性肉芽腫症、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、全身性エリテマトーデスなどがあります。これらは発熱、倦怠感、関節痛その他全身の症状を伴う事が多く、尿検査で尿潜血?尿蛋白が陽性で、腎機能障害を認める場合は、早期の専門医受診が必要です。
悪性腫瘍に伴う腎障害では、腫瘍そのものが影響する場合と、治療薬が影響する場合があります。前者では、腫瘍の治療を行うと腎障害も改善することが多いですが、後者は改善する場合もあればそうでない場合もあり、腎障害が起こった場合に治療を継続するかどうか悩ましい場面も数多くあります。
心臓と腎臓の悪循環については、心腎連関という名称があります。心臓が悪くなることで腎臓が悪くなる、あるいは腎臓が悪くなることで心臓が悪くなる、そして悪くなり方が急激なのか徐々になのか、などで分類されます。薬の使い方が心臓と腎臓で違うこともあり、お互いのバランスをとるのが非常に難しい状態になります。
このように、腎障害がある場合は全身の状態にも気を配りつつ診療を行っています。